春のほどける日

待つことのはじまり

来（きた）るものへのやわらかな予感

報われる確信のない

くるおしい

くるおしい期待

首をかたむけて探る

光の雨だれの音（ね）

疑い

否定しながら

でも知っている強い訪い

おずおずとひらく

問いかけの瞳（まなこ）

きつく胸を抱いて

せつないと言わずに噛む唇

腕に身を委ねながらも

接吻（くちづけ）にはわななき返す

かすかな

かすかなくれないの指先

やがてそれは来る

前触れのない無礼な到着によって

吹つけ　吹き上げ

また吹き去って行く

勇み足の

荒いひと時の抱擁

高く開く腕めがけ

押し寄せ　喉に残す

蒼いいとしさ

馳せ来ると同時に別離を繰り返す

乱暴な現れ始めた未知

身の奥底までも抗い難くおののかす

若い夏の息

清しい

甘やかな蹂躙


















※訪い 　　　（おとない）
※委ね　　　（ゆだね）

※抗い難く　（あらがいがたく）
※清しい　　（すがしい）
※蹂躙　　　（じゅうりん）