「出口」
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色鮮らかな薔薇(そうび)の朱色
陰鬱な半眼の春の空
薄衣(うすぎぬ)をゆるく引く唐詩の美女
狂気と才気を縁から覗く書
きみどりさやかな光の記憶
地中海から出た青い青い石盤
強いても 強いても
一日という刻(とき)の区切りを
私の精神(こころ)は知ろうとしない
(このままでは
このままでは)
今を限りと咲く桜花(さくらばな)
白い不愛想を組み立てる凶悪な音
暗い星々の中をゆく物語
故郷に後ろ指をさされる詩人のくちもと
決して成熟することのない美しい少年の腕
この国で明日も生活してゆくための銭勘定
朝で開け夜で閉じる一日を
酷(むご)く味わっている私の肉体(からだ)
(このままでは
このままでは)
まるで音のない灰色の中に
ただ転がって仰向いた木偶(でく)のように
まるで小さな椀に入った
とろとろぬるい重湯のように
(このままでは
ああ)
それでいままで眠りも得ず
かたく閉ざした目の奥で
探している
この内部の出口
私をほどく
私のことばを
※鮮らか (あざらか)
※半眼 (はんがん)